コラム

2017.6.2

「Advertising Week Asia 2017」AOLセッションレポート

 Advertising Week は2004年に創設され、ニューヨークをはじめロンドン、東京、さらに今年はメキシコシティでも開催される世界最大の広告業界イベント。広告やアドテック、マーケティング、メディアの専門家が一堂に会して毎年大変な盛り上がりを見せ、昨年度は合計14万人以上の参加者を集めた。AOLは、第1回開催時からスポンサーとして「広告業界を支える全ての人のためのイベント」と言われるAdvertising Weekの発展を見守り続けている。

 2016年に日本(アジア)への初上陸を果たし、今年で2回目の開催となるAdvertising Week Asia 2017が、5月29日(月)から6月1日(木)の4日間、昨年同様六本木・東京ミッドタウンで開催された。今年は「unlocking tomorrow」をテーマに、期間中様々なセッションが実施され、会場には国内外から多くの業界関係者が来場。基調講演だけでなく、各セッションも立ち見が出る盛況ぶりであった。

 その中でAOLは、広告配信プラットフォーム事業社であると同時に自社メディアを運営するユニークな立場から、TechCrunch Japan 西村編集長、Engadget 日本版 矢崎編集長、ハフポスト日本版 竹下編集長の3名が登壇し、SmartNews藤村執行役員をモデレータに、「プレミアムコンテンツ - つくり手の本音と舞台裏」というテーマでセッションを開催。その一部をレポートでお伝えする。

Advertising Week Asia 2017: http://asia.advertisingweek.com/

「Advertising Week Asia 2017」AOLセッションレポート
各媒体の紹介

 SmartNews藤村氏の「昨今、世界で様々なことが起こっている中、メディアにおけるプレミアム性が重要だと考えている。今日は各編集長に、具体的にユニークな取り組みについて聞いてみたい」という一言を皮切りにセッションはスタート。まずは各編集長による媒体紹介から始まった。

 「TechCrunch Japanは、シリコンバレー発のグローバルなテック系メディア。シリコンバレーの情報に加え日本のスタートアップに関するニュースも展開しており、ベンチャーエコシステムの構築を目指している。」(西村編集長)、「Engadget 日本版はギークをターゲットに、コンシューマー向けのニュースを展開。ギークが知っておかなければならないニュースを、どこよりも深く早く届けている。」(矢崎編集長)、「ハフポスト日本版は、一般ニュースに加え、主婦や大学生をはじめとする1,200名を超えるブロガーによる執筆記事も掲載。単なるメディアの枠を超えた、一つのプラットフォームとなっている。」(竹下編集長)など、それぞれのメディアの特徴やこだわりを紹介。藤村氏は「アグリゲーターの立場で見ると、各メディアは全然似ていない。しかし、それぞれのこだわりで、それぞれのターゲットを引き付けている」とコメントした。

「Advertising Week Asia 2017」AOLセッションレポート
プレミアムとは

 続けて、藤村氏より「プレミアム性をどこで作り出そうとしているか」という問いが各編集長に投げかけられた。

 矢崎編集長は、「あえてジャンルを絞ることで存在感が際立ち、読者にインパクトを与えることができる。速報性ばかり追い求めるのでなく、より面白いものを抽出し、深い考察を入れることで、キュレーションサイトやソーシャルメディア上で記事が読まれる際、Engadgetの記事だと読者に気づいてもらえるようになる」と話した。藤村氏の「あえて客観的にならないのか?」という問いに同意し、「また、読者との距離感を大切にしており、ソーシャルメディアで情報発信するだけでなく、リアルで編集部のメンバーと会える場を設けている」(矢崎編集長)と回答。こうした独自の取り組みにより、Engadget日本版は競合メディアと比較し、読者の平均年齢が10歳以上若いというデータもある。

 西村編集長は、「基本は読者が読みたいものを読みやすい形で届ける、というスタンスを伝統的なプレミア感として大切にしている。またTechCrunch Japanでは、『見立てを書け・オピニオンも出していい』と編集部員に伝えている。一方、現代的なプレミア感とは、ペットボトルの水で起こっていることだと思う」と、飲料水の例を引き合いに鋭い持論を展開。「例えばペットボトル水が売れるのは、ブランドの力によるもの。水で起こったことが、オンラインメディアでも起こるのでは」と話した。加えて、「TechCrunchのプレミアム性は他にもある。社会との接点を作るために、オフラインを大切にしており、日本では数少ないオープンなスタートアップ関連イベントを主催している。また、テクノロジーを軸にビジネスの話ができる点もポイントだ。」と続けた。また、「TechCrunchはイノベーションやテクノロジーでビジネス起こそうとしている人のエネルギーとなりたい。ヴォルビックのように、世界中どこで買っても(見ても)間違いないブランドになっていきたい」と抱負も語った。

 これを受け藤村氏は、「プレミアムとは、他では作れない、圧倒的な違いを持てるかどうかではないか」とコメント。続いて、「決定的な違いをどう作っていくか」について、ハフポスト日本版の竹下編集長に訊いた。

 竹下編集長は、「ニュースは誰でも、人工知能でも作れる時代になっている。また、昨今はSmartNews、Yahoo!、LINEといったキュレーションメディアでニュースを見る人々が増えているため、各媒体の名前が際立たなくなっている。例えば、ある人に好きなニュースは何か聞くと、『スポーツニュース』などジャンル・名詞で回答する。しかし、ジャンルをまたいだ活動が増加する時代において、既存のジャンルでは伝わりづらくなっている。そのため、ハフポスト日本版では『メッセージ』という新たな切り口を用いている。」と、ハフポスト日本版の新たな取り組みを紹介。「メッセージを伝えることで、ハフポストの名前は読者の印象に残らずとも、ストーリー自体は頭に残る。ジャンルを問わず、メッセージを切り口とすることで、媒体としてのプレミアム感を出していきたい。」と力強く話した。

 藤村氏も、「ハフポストはアジェンダ設定がうまく、竹下編集長の感性が効いており、トレンドの作り方がうまい」とコメント。

ブランドセーフティ

 続いて話題は、昨今藤村氏が注目するトピックの一つ「ブランドセーフティ」に。藤村氏は、「オンライン動画サイトにおける問題に端を発し、今まさに広告主、メディア、広告、コンテンツに関して、もう一度考えを見直し、方向感を整えることが必要ではないか。」と問題提起。この問いかけに対し、各媒体がいかに広告主(ブランド)にとっても信頼・安心できるパートナーか、また広告主(ブランド)が安心してコラボレートできるメディアとは一体どういったメディアか、各編集長がそれぞれ現在の取り組みや考えを解説した。

 竹下編集長は、「ブロガーが載せる記事が間違っていると、ハフポストという組織の責任になってしまう。日本は特にその傾向が強いため、チェック機能を強化している。例えば、編集部員がつきっきりでブロガーの記事添削・文章指導を行っている。一見ただのコストに見えるが、編集部員が『丁寧に見てくれる』ため、学生をはじめとするブロガーには評判が良く、ハフポストに投稿する価値の一つとなっている。」と話した。

矢崎編集長は、「オンライン媒体の場合は、記事公開後も訂正・修正が可能だが、信頼に関わってくる。そのため、訂正した場合もそのまま残す、訂正箇所を分かりやすくするなど、誤りを隠蔽しないモラルを大切にすべき。一方で、速報性も重要なため、記事公開権限をどこまで持たせるか、も重要な課題だと思っている。Engadget日本版では、編集部外の人とも『バーチャル編集部』と呼ばれる組織を持ち、リアルでの信頼関係の中で速報性を出せるよう工夫している。」

矢崎編集長の話を聞いた藤村氏は、「ライブ感、リアルタイム感が重要な中、クオリティに関して、従来のマスメディアによるファクトチェックとは異なる難易度が存在するのではないか。」と指摘。

これに対し西村編集長は、「各媒体の性質で異なるかもしれないが、ネットになって誤植には寛容になった。しかし、TechCrunch Japanではいまだに記事公開権限は絞っている。一方、記事執筆にあたってのガイドラインを昔から社内で持っているが、これをもっと外に出した方が良いのではと思っている。例えば、新興メディアであるThe Vergeでは、記者個人のバックグラウンド、エシックス(倫理観、道徳観)など公開している。どんな人間関係で仕事しているかなど、もっとオープンにしていくべきではないか。」と話した。

「Advertising Week Asia 2017」AOLセッションレポート
各編集長が気になるトレンド

 最後に、各編集長に気になるトレンドを聞いた。

 竹下編集長は、「『企業が作成した』ときちんと公開するネイティブアドにはまだ可能性があるのではないか。ネイティブアドもキュレーションメディア経由で分散するといいのでは」と回答。

 西村編集長は、「AIと音に注目している。Air Podsの活用や、Podcast、短い音のTwitterなど、これから広がりを見せると思う。『広告と音』という切り口が興味深い」と話した。矢崎編集長は、「広告プラットフォームでいうと『体験型コンテンツ』に注目している。VR(Virtual Reality)の中の広告はまだまだ全然広まっていないので、注目している」と解説。各編集長独自の切り口で、セッション参加者に広告の新しい形についての洞察を与えていた。

 各編集長の話に藤村氏は、「日本では、いまだにオンラインメディアにある種の偏見がある。しかし、若くて新しい、モダンなテーマを抱える媒体がこうして品質にこだわりを持って仕事をしていると分かって大変うれしい。」と話し、セッションを締めくくった。

「Advertising Week Asia 2017」AOLセッションレポート
Connects Cocktail Party Sponsored by AOL

 期間中は昼夜に渡って様々なイベントが開催されるのもAdvertising Weekの特徴。セッションでの情報発信に加え、AOLはカクテル・ネットワーキングパーティーのスポンサーとしてもAdvertising Weekを盛り上げた。

「Advertising Week Asia 2017」AOLセッションレポート

《ご注意》
本発表内容には、将来に関する記述が含まれています。こうした記述はリスクや不確実性を内包するものであり、経営環境の変化などにより実際とは異なる可能性があることにご留意ください。また、本発表資料は、日本国内外を問わず一切の投資勧誘またはそれに類する行為を目的として作成されたものではありません。